いばらきの公共事業(歴史をたどる)

いばらきの公共事業 県土木部総括技監・部長編⑩

2024.05.11

いばらきの公共事業(歴史をたどる)

茨城県の魅力を大幅に向上させた圏央道

渡邊 一夫 氏
元県土木部長

野島 泰久 氏
元圏央道整備推進監兼竜ケ崎工事事務所長

 圏央道により、茨城県の魅力と利便性は大幅に向上したと思います。県内はすでに全区間2車線で供用されており、現在4車線化が急ピッチで進められております。アクセス道路も着々と整備されており、各地で企業誘致が活発に行われているのです。今回は、この圏央道のお話をさせてもらいます。

農振農用地にIC開発

 圏央道(首都圏中央連絡自動車道)は、都心から半径40~60㎞の位置に計画された、延長約300㎞の環状の高規格幹線道路です。横浜、厚木、八王子、川越、つくば、成田、木更津などの都市を連絡し、東京湾アクアラインとも一体となって、首都圏の広域的な幹線道路網を形成しているのです。
 この圏央道計画は、1963年(昭和38年)にまとめられた「都市間高速道路整備構想」が原形と聞いております。茨城県内の延長は約71㎞で、常磐自動車道から千葉県境までの東側が約29㎞、埼玉県境までの西側が約42㎞となっております。
 待ち望んでいた基本計画が出たのは、東側が平成元年、西側が平成2年でした。いよいよ都市計画決定の手続きに入れるのです。
 私は平成2年から都市計画課に在籍し、この都市計画決定に関わっておりました。この頃、国から示された東側のインターチェンジの数は3箇所でしたが、県が用地協力や需要創出を積極的に行うことなどを条件に、5箇所に増やすことを認めていただきました。これを機に、阿見東インターを中心とする約161 haの阿見吉原土地区画整理事業が進められたのです。
 いよいよ都市計画決定のための地元説明会が開催されました。集落ごとにこまめに実施され、いろいろな質問に丁寧に答え、理解を得ながら進められました。もちろん私も、ほとんど同席しておりました。希少な鳥である「ヒシクイ」や「オオタカ」の扱いには、大いに悩まされました。
 都市計画決定ができたのは、東側が平成6年4月、西側が平成7年3月でした。この時、私は高速道路対策室室長補佐になっていました。
 ちょうど、この平成6年には、国土交通省の常総国道事務所が土浦市に設置されました。茨城県の圏央道整備を中心に、県南部の国道整備を担う事務所です。「さあ、これで圏央道が急ピッチで進むだろう」と、我々は大歓迎しました。諸々の調査・測量・用地買収を進め、平成12年には工事着手し、平成15年には県内で初めて常磐道つくばJCTから国道6号つくば牛久IC間を開通させたのです。
 県でも、インターアクセス道路を急ピッチで進めました。竜ケ崎工事事務所管内では主要地方道土浦竜ケ崎線バイパス、竜ヶ崎阿見線バイパスなど、土浦土木事務所管内では国道6号牛久土浦バイパス(直轄事業、県では用地協力)など、常総工事事務所管内では国道294号バイパスの4車線化、境工事事務所管内では国道354号境岩井バイパス、古河境バイパスなどです。
 圏央道は国と道路公団の合併施工であり、当然県が負担する直轄負担金も毎年相当の額だったので、予算確保に苦慮したのをよく覚えております。
 しかし、嬉しい思い出もたくさんあります。
 まず、私が土木部長の時、阿見吉原土地区画整理地内で『阿見プレミアムアウトレット』に立地いただけたことです。これは、インターからアウトレットに直接乗り入れできるダイレクトアクセスが条件でした。これをうまく処理でき、この一件を好機に区画整理がうまく回転しはじめたので、非常に嬉しく感じました。
 また、常総市が進めた農振農用地のど真ん中のインター開発も嬉しかったことの一つです。非常に難しいと思っておりましたが、常総市をはじめ関係者の皆様の長い努力により、農水省のご協力も得られ、鬼怒川決壊にもめげず、今では立派なまちづくりができました。
 圏央道は、平成29年2月26日に境古河IC~つくば中央IC間が開通し、県内が暫定2車線で全線開通となりました。そして現在、令和7~8年度の全線開通を目指して、4車線化整備が進められているのです。
 圏央道整備のおかげで、茨城県の魅力は大幅に向上しているのだなと、しみじみ思っております。

ダイレクトアクセス条件に企業誘致

主要地方道竜ケ崎阿見線バイパス
境古河ICのアクセス道路である境岩井バイパス

野島 泰久(のじま やすひさ)
1964年2月2日生まれ。60歳。87年に入庁して、下水道課に配属となった。その後、近年は都市局都市整備課市街地整備室長、境工事事務所長などを務め、2024年3月に圏央道整備推進監兼竜ケ崎工事事務所長で定年を迎えた。

沿線地域のまちづくりを加速

 私の仕事の中で、かなり大きい部分を占めたものが首都圏中央連絡自動車道(圏央道)沿線整備です。関連道路整備と拠点開発の両方に携わらせていただきました。
 県内の圏央道インターチェンジは、埼玉県から千葉県に向かって、五霞IC、境古河IC、坂東IC、常総IC、つくば中央IC、つくば牛久IC、牛久阿見IC、阿見東IC、稲敷IC、稲敷東ICの10か所です。このうち常総ICとつくば中央IC、つくば牛久ICを除く7つのIC周辺で展開する事業に取り組みましたので、その中から主なものについて触れさせていただきます。
 まずは五霞IC周辺の道の駅ごかについてです。私は平成12~14年度まで道路建設課道路企画担当で、国交省直轄事業との調整業務などを担当しておりました。木村秀雄課長(当時)、後藤和正技佐(当時)から五霞町を支援するよう指示があり、道の駅の立ち上げをサポートしたのです。
 当時の五霞町の故・大谷隆照町長のほか、事業化に熱意を持って取り組む2人の町職員がいて、この3人とともに事業化に向けた要望協議を行い、平成17年4月に開業することができました。この日、大谷町長が満足げに空を見上げていたのをよく覚えています。
 続いて境古河ICと坂東IC関連についてです。令和3~4年度、私は境工事事務所に所長として勤務し、境古河ICへのアクセス道路である国道354号境岩井バイパスと国道354号古河境バイパスの2路線、坂東ICへのアクセス道路である主要地方道結城坂東線バイパスを担当しました。
 国道354号境岩井バイパスと主要地方道結城坂東線には、本線供用のためにまとめなければならない難航地権者がいて、その解決に力を注ぎました。驚いたのは、仕事も遊びも上手な若い用地職員が、代替地を求める難航地権者が納得する代替地にたどり着くまで、3日に一度くらいの間隔で新しい代替地を提案するため相手宅へ赴き、最後には根負けさせて契約させてしまったことです。おかげさまで両路線とも、近いうちに供用できるのではないかと思います。国道354号古河境バイパスについては、先の2路線に比べて新規事業化が遅かったのですが、用地交渉も工事もこれから本格化していくでしょう。
 その後、令和5年度に竜ケ崎工事事務所に異動となり、圏央道沿線整備推進監兼所長として、牛久阿見IC、阿見東IC、稲敷IC、稲敷東ICなどに接続するバイパス等を担当することになりました。
 牛久阿見ICは、主要地方道土浦竜ケ崎線バイパスと主要地方道土浦稲敷線バイパスで構成される通称「L型」区間と呼ぶ同ICから、ひたち野うしく地区まで繋がる区間を優先的に供用できるよう取り組みました。
 阿見東ICは、私にとって縁のあるところです。接続する主要地方道竜ヶ崎阿見線バイパスは、まず平成4~7年度まで、竜ケ崎工事事務所がまだ竜ヶ崎土木事務所だった時代に先輩から引き継いだ事業でした。このとき事業が進められていたのは国道125号現道から国道125号バイパスまでの区間で、隣接して日本新都市開発㈱が開発を進める南平台地区に係る住宅宅地関連公共施設等総合整備事業として、他の圏央道アクセス道路に先行し事業化、用地取得し工事に着手しました。
 その後、IC周辺で県が進める阿見吉原土地区画整理事業については2回携わりました。1回目は平成8~9年度で、県南都市建設事務所調査課に主任として勤務し、基本計画の策定とともに、県も地主となるべく用地先行取得を行いました。2回目は平成19~24年度までで、この時は事業が竜ケ崎工事事務所阿見吉原地区整備課に移っており、係長、主査、課長として東工区事業を推進するとともに、プレミアムアウトレットの誘致と西南工区の新規事業化を担当し、併せて竜ヶ崎阿見線バイパスの地区内整備にも取り組みました。
 アウトレットモールの誘致は、本庁都市整備課が交渉の窓口となり、我々事務所サイドでは相手からの進出条件を実行可能な計画に落とし込む作業をしました。このとき渡邊一夫土木部長(当時)に、阿見東ICからアウトレットモールに直結するダイレクトアクセスの整備について了解をいただけたことで、誘致が一気に進みました。
 土地区画整理事業は令和3年度末に終了しました。現在、地区内に約1000人が住むようになり、阿見町の常住人口が令和5年11月に5万人を突破しました。当事業がその一端を担えたのではないかと思います。早い段階から住民や権利者とのコミュニケーションを重視してきたため、現在でも地元権利者などと交流があり、このつながりは私の大切な財産になっております。
 アクセス道路整備ですが、令和5年度は土地区画整理事業区域から南側外側区間と、その延伸区間である主要地方道美浦栄線バイパス事業を展開しました。特に、用地取得でお世話になった龍ヶ崎市と牛久市の職員の皆様は心強い存在でした。
 稲敷IC関連では、主要地方道江戸崎新利根線と国道125号大谷バイパスの未供用区間について、稲敷東IC関連は、一般県道江戸崎下総線、国道125号桜川バイパス、主要地方道竜ケ崎潮来線バイパスについて、用地取得でそれぞれ難しい課題があることから、担当職員と早期に解決できる手法を模索しました。
 実は平成15~19年度までは都市計画課で土地利用計画担当の係長を務めていましたが、この時つくば牛久IC周辺での開発構想について地元から相談を受けていました。また、令和元年度から2年度までは都市整備課市街地整備室長を務めており、常総IC周辺で施行されていた常総インターチェンジ周辺土地区画整理事業を事業認可権者の立場で進めたほか、つくば中央IC周辺のつくば中央インター北地区についても、つくば市などから事業化に向けて相談にのっておりました。
 こうした間接的な取り組みも含めると、県内すべての圏央道IC周辺での業務に何らかの形で携わったことになります。
 今後も圏央道沿線は発展の可能性が高く、多種多様な展開が進むと考えられます。私は、安心安全で活力があり、賑わいと潤いのある地域・まちづくりを少しでも前に進められればという想いで業務に取り組んできました。今後を担う皆様には、思いきり自分の能力を発揮され、地域づくりやまちづくりを進めていただくことをご祈念申し上げます。(島津就子)

坂東ICのアクセス道路である結城坂東線バイパス

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