いばらきの公共事業(歴史をたどる)

いばらきの公共事業 県土木部総括技監・部長編⑥

2024.03.23

いばらきの公共事業(歴史をたどる)

道路公社と有料道路について

渡邊 一夫 氏
元県土木部長

豊島 信拓 氏
元県道路公社理事兼顧問

若草大橋有料道路 「千葉茨城道路」をイメージ

 道路公社が設立されたのは、私が県に採用された昭和46年のことです。鹿島のコンビナートを支えている水郷有料道路が最初の仕事でした。大子町の月居トンネルも、道路公社が手がけた有料道路だったのです。筑波山のつつじが丘駐車場も管理運営しています。道路公社は、茨城県を支える「ちからもち」なのです。(弊社HPトピックスに掲載)

 茨城県道路公社は、現在4箇所の有料道路を管理運営しております。
 まずはじめに、日立有料道路です。平成元年9月から事業に着手し、常磐自動車道日立中央インターチェンジの開通に合わせ、平成5年10月に供用開始しました。日立中央インターチェンジと主要地方道日立山方線を接続する、延長1・6㎞の有料道路です。
 この日立山方線は、国道6号と国道349号を結んでおります。私どもも肋骨道路として関わり、重点整備した路線です。日立中央インターチェンジの開設と、日立有料道路の供用は、国道6号の日立市内での混雑緩和に大いに役立っているのです。
 次に水海道有料道路です。国道354号岩井水海道バイパスの一部で、鬼怒川に架かる水海道大橋を含む、延長2・7㎞の有料道路です。旧国道354号豊水橋付近の慢性的な交通渋滞を解消するため、整備が急がれました。現在、地元市のご協力により、通学時間帯の無料措置を行っていただいております。私も、前後の取付道には深く関わっており、思い出の多い路線です。
 3番目は常陸那珂有料道路です。北関東自動車道に直結し、物流拠点である常陸那珂港や、国営ひたち海浜公園などの利便性を高めている有料道路です。延長2・9㎞で、日本道路公団(現在NEXCO東日本)が管理する東水戸道路と同時に、平成11年、供用開始されました。この有料道路は、今後県北地域にのびていく地域高規格道路の基点にもなるわけです。
 また、この整備と東水戸道路の整備は、私たちが道路建設課時代に進めてきた北関東自動車道の整備促進にも大いに役に立ってくれたのです。
 最後は、私にとって特に思い入れの深い若草大橋有料道路です。これは上流側の栄橋(利根町)付近で交通緩和を図るための、第2栄橋の計画から始まっています。
 利根川をはさんで茨城県、千葉県の市街地状況を考えてのルート案は、現・栄橋からだいぶ下流側に計画され、これでは新橋ができても栄橋の交通緩和には繋がらないのでは、と心配の声が上がっておりました。私が道路建設課長補佐の時の話です。
 早朝から、担当と何度も何度も現場に足を運んで、対策を考え続けました。結果的に、栄橋付近の交差点改良などを進めるとともに、新橋と美浦栄線バイパス事業をできるだけ早く進めること、現・千葉竜ケ崎線とのアクセス性を高めることとしたのです。
 具体的には、主要地方道取手東線、県道立崎羽根野線、河内竜ケ崎線の整備です。事業を促進することもあり、千葉県側の国道356号から取手東線までの、利根川渡河部を含む延長1・7㎞は、有料道路事業を活用することになったのです。
 この事業は平成13年に着手し、平成18年に供用開始となりました。これが若草大橋有料道路です。
 なお、この路線は将来、地域高規格道路にも耐えられるようにしようとの合意形成もでき、地元のご協力をいただきながら事業が進められました。竜ヶ崎ニュータウン側の了解も得られ、のびのびとしたルートになったのです。
 そして平成27年には、主要地方道竜ヶ崎潮来線までの5・3㎞区間が供用されて、令和3年には竜ケ崎ニュータウンの軸線である県道八代庄兵衛新田線まで、有料道路を含め7・5㎞が供用開始となったのです。さらに整備が進んでいけば、先線と合わせ、だんだんと千葉茨城道路がイメージできるようになると思います。
 道路公社は昭和46年に設立され、数々の有料道路を手掛けてきたのです。今後の活躍を期待したいと思います。

公社事業は大きな財産

 現在、茨城県道路公社では、日立・水海道・常陸那珂・若草大橋の4路線で料金徴収をしており、道路清掃、草刈など必要な維持管理をしながら、利用者が快適にドライブできるよう励んでおります。
 日立有料道路は、常磐自動車道日立中央ICの接続道路として整備された路線です。平成元年9月、県道日立山方線までの1・6㎞について、有料道路として道路公社が工事に着手しました。
 トンネル工事は延長730m、掘削はNATOM工法、昼夜作業により両側工区から掘削しました。日立山方線取付部は、ループ式高架橋によりトンネルと県道の落差を結んでいます。緩やかな勾配で弧を描く高架橋の景観は、ほどよく日立鉱山の山並みに馴染んでいます。
 高鈴トンネルの掘削も予定どおり進み、最終発破スイッチを入れる貫通式が行われました。事業関係者を招き、開通式までの工事安全を祈願しました。
 日立市への玄関口となる日立山方線は、交差点改良工事と宮田川の河川改修工事を道路公社が受託施工しました。高萩土木事務所、日立市役所、NEXCOの皆様には大変お世話になり、無事故で開通式を迎えられましたこと、御礼申しあげます。
 続いて水海道有料道路は、岩井水海道バイパスの鬼怒川架橋部を含めた2・7㎞について、有料道路と公共事業費を合わせた合併施工方式を採用した事業です。有料道路事業を投入することにより、整備が早く進められることになりました。平成6年、大臣許可を得て、水海道市役所内に建設事務所を開設、工事が開始されました。
 水海道大橋下部工は鋼管矢板井筒工法、上部工はPC場所打ち連続箱桁を採用しました。道路部は平面交差が多く、県道猿島水海道線には立体交差構造で交通の円滑化を図りました。現道取付部も同時供用するため、道路公社が施工しました。
 工事を順調に進めることができたのは、道路建設課の皆さん、土木事務所、市役所の皆さんのおかげに他ならないです。改めて、厚く御礼申しあげます。
 次に常陸那珂有料道路ですが、これは初めての高規格有料道路で、接続する常陸那珂港南線を受託施工しました。この路線2・9㎞も、公共費・有料費の合併施工方式を採用しています。水戸射爆場跡地に計画したもので、関係機関との調整事項は山積みでしたが、皆様の暖かい協力により工事は順調に進みました。
 自衛隊不発弾処理班により、年度ごとにまとめて不発弾を保存。国営ひたち海浜公園内で厳戒態勢を敷き、周辺道路交通止めにより爆破処理がされました。公共受託施工の常陸那珂港南線海浜公園高架橋はインターチェンジ形式に、道路照明はタワー式で、道路入口のシンボルとしました。
 工事費については、工区割りを大きく設定しましたので、工事担当者は悲鳴を上げながら工事監督に起工設計・変更設計作業と、めまぐるしい毎日が続いていました。大きな苦労をかけたと思います。
 工務課長兼務で、開通まで所長を務めさせていただきました。東水戸道路との合同開通式では、交通安全祈願の際に、公社代表として道路上に立てたことが、大変懐かしく思い出されます。
 続いて、若草大橋有料道路についてお話します。この道路は千葉茨城道路という位置付けをもって、この地域の慢性的な交通渋滞の緩和、千葉茨城両県の経済文化の交流による地域発展が一層図られることを期待し、計画されました。
 架橋位置から上流7㎞地点に栄橋、下流8㎞地点に長豊橋があります。建設費は有料費と公共費の合併施工方式をとり、将来の未償還金を抑えられるよう調整しました。用地取得は公共費で取得、竜ケ崎土木事務所と共に交渉に当たりました。
 平成13年の建設大臣許可に伴い、有料道路1・7㎞の工事が始まりました。付近の地盤は軟弱層で囲まれています。そのため、道路部には道路の沈下を防ぐための「深層混合処理」という、地盤を固める工法を採用しました。鋼管矢板井筒というオープンケーソンが用いられ、橋脚周辺の地下水位を下げるためのウエルポイントを使用しました。上部工は連続鋼箱桁を採用。利根川の河川区域であるため、工事期間は渇水期に制限され、仮設桟橋の設置方法および上部工架設に台船を使用するなどの工夫しました。
 そして無事、平成18年3月に開通式を迎えることができました。竜ケ崎土木事務所・国土交通省河川事務所・利根町・土地改良区の皆様には多大な御協力をいただきました。厚く御礼申しあげます。
 最後に月居トンネルですが、これについては昭和51年、天皇皇后両陛下をお迎えする「全国植樹祭」を大子町で開催する事になり、早急な周辺道路整備が求められたのです。この時、主要な進入道路となる月居トンネルのバイパス整備が計画されました。
 短期3年間で仕上げるため、道路公社が有料道路として建設、合わせて袋田の滝からの公共区間も受託施工しました。このトンネルは生活道路の利用が多く、地元と県が負担し3年で無料化が実現。奥久慈の観光道路として親しまれています。 
 以上、道路公社事業を紹介させて頂きました。有料道路は本来単独事業であるものですが、近年不採算の路線が増えたことなどから、未償還金が残らないよう公共有料合併方式が多く採用されることになりました。重要路線を早期に集中して工事を行い、供用開始を図ること、また維持管理を道路公社が行うことにより、県土木部の負担を軽減し節税を図ることが重要だと考えられるようになりました。
 私は入社当初、経験豊かな県土木部の先輩に指導を受けながら、緊張した毎日を過ごしていました。いま76歳を迎え、記憶を蘇らせていくと、一緒に過ごした方々の懐かしい顔が浮かんできます。
 令和3年、道路公社は設立50年を迎え、記念誌「茨城県道路公社50年のあゆみ」が刊行されました。記念誌編集にあたり、道路公社友の会一員として参画させていただきました。県土木部・市町村・国土交通省・関係地権者・コンサルタント・工事会社等、多くの皆様に道路公社の事業をご理解頂き、事業促進のご支援を頂いたこと、私個人にとっても大きな財産となっています。
 思い出深い、やりがいのある仕事をさせていただきました。これからも、道路公社卒業生の一員として、微力ではありますが恩返しに努めて参りたいと思います。この紙面をお借りして、重ねて厚く御礼申しあげます。(島津就子)

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