いばらきの公共事業(歴史をたどる)

いばらきの公共事業 県土木部道路建設課編⑥

2023.10.28

いばらきの公共事業(歴史をたどる)

国道118号と袋田バイパスについて

渡邊 一夫 氏
元県土木部長(当時・県土木部道路建設課)

原部 修一 氏
元県土木部技監兼検査指導課長(当時・県大子工務所長)

 奥久慈は、茨城・福島両県境付近の久慈川に沿う地域です。渓谷美、山岳美、温泉などにより、両県で奥久慈県立自然公園に指定されています。それを支えているのが、国道118号なのです。久慈川の渡りに苦労しながらも、渓谷美、山岳美を守り、道路の整備を進めてきたお話です。

奥久慈の観光を支える118号

 国道118号は、水戸市の中央郵便局前交差点(国道50号交点)を起点とし、那珂市、常陸大宮市、大子町を経て、福島県会津若松市に至る延長216・8㎞、うち茨城県66・7㎞の一般国道です。久慈川に沿って北上し、県北地域を縦貫して、JR東日本水郡線とほぼ並行しております。昭和40年、一般国道に指定されて以来、重点整備されてきた路線です。
 特に大子地内は、久慈川を何度も何度も渡り、地形も急峻で、さらに構造物の連続であるため、関係された方々のご苦労は大変なものだったと思います。
 私が最初に関わったのは山方バイパスで、昭和58年~60年の時でした。山方バイパスは昭和61年に、最寄りの山方トンネルは昭和63年に開通しております。何度も何度も現地打ち合わせをしたのが、懐かしく思い出されます。
 その後、平成2年度には袋田バイパスが事業化されました。大子町袋田地内から北田気地内までの延長3・6㎞のバイパスで、久慈川を4回渡り水郡線を2回跨ぐ計画であるため、難工事が予想された事業です。
 予算の確保に苦慮し、また大子工務所では地元対策をしながらの用地交渉も大変だったと思いますが、工事は着々と進められました。
 平成19年度、私が土木部長の時には「南側の下津原橋を含む約700m区間が供用されており、終点側の北田気地内の約700m区間も年内に完成させます」と議会答弁しております。
 現在、南側からの延長1600m、終点側の700mが供用開始されております。残る1300mも整備中であり、南田気跨線橋も北田気大橋もすでに架設済みとなっております。残事業も少ないことから、いよいよ全線開通が見えてきたと思います。長い年月がかかりましたが、そうなれば観光シーズン時の袋田の滝方面に来られた方が渋滞に悩まされず、より観光が楽しめるようになるでしょう。
 一方、大宮バイパスの南側では慢性的な交通渋滞を解消するため、平成8年度から那珂大宮バイパスとして、4車線化事業が進められております。現在、那珂市中里地内(平の台団地入口付近)から常陸大宮市下村田地内(大宮バイパス起点)までの4・7㎞が4車線となり、大宮バイパスと合わせた国道293号交差点までの約9㎞が4車線となっております。
 この118号を利用して、春・夏・秋の行楽シーズンには奥久慈渓谷、男体山、月居峠、袋田の滝などの景勝地や温泉を目指し、また新緑や紅葉を楽しむため、首都圏各地域からたくさんのお客様が訪れるのです。お土産には特産品のりんごやこんにゃく、湯葉などを買って帰られるのです。

原部 修一(はらべ しゅういち)
1962年2月23日生まれ。61歳。入庁時期は84年、土木部河川課に配属。その後は、下水道課長、技監兼検査指導課長、企業局次長などを経て、2022年3月に定年を迎えた。現在は茨城県開発公社に務めている。

観光振興の思いを道路へ

 私は平成28、29年度と、大子工務所長を務めさせていただきました。国道118号袋田バイパス、国道461号大子橋の架け替え、諸沢西金停車場線の共用、久慈川等の改良・改修工事のほか、大子広域公園や国県道一級河川などの維持管理を行い、その間に地域の方々とも交流を持てた、充実した2年間でした。大子町は、冬には路面が凍結するため、除雪作業や塩カル撒きなどでは建設業界の皆さんに大変お世話になりました。
 当時の国道118号袋田バイパスの進捗状況は、下津原橋から供用開始区間700m以北の、南田気大橋の下部工が完成し、ちょうど上部工を発注するところでした。
 バイパスの用地交渉については、難航案件がありましたが、事業の必要性を説明し、地権者の事情を一つひとつ熱心に聞きながら説明を進め、なんとか地元の理解を得て、準備を進めることができました。事業費についても、思うように進まず足踏みしていたところでしたが、予算確保のため、工務所のみんなで総力をあげて動きました。南田気大橋の工事が進んだことも、袋田バイパスの残区間(事業費40億円分)の工事に弾みをつけた要因になったと考えております。
 当時は道の駅常陸大宮「かわプラザ」がオープンした頃で、渋滞の問題が深刻化していました。袋田方面でランチを予約していた他県のバス観光客が時間までに到着できず、そのまま引き返してしまう事例が発生するなど、由々しき事態となっていたのです。このままでは、県北へ観光する人がいなくなってしまうのではないかと思い、事業を進めなければならないという気持ちがより強くなりました。工務所全体で熱心に対応した日々が、懐かしく思い出されます。
 現在、事業完了に向けて、整備が進められており、完成まであと少しのようです。袋田バイパスが完成することで、大子の景色に新たなロケーションが広がることが期待されます。水害等を機に進んだ久慈川の改修や、松沼橋の架け替えなどにより、今まで以上に地域の安全度も上がってきております。
 渋滞対策では、水戸土木事務所や常陸大宮土木事務所、常陸太田工事事務所にもご協力いただき、大子への混雑緩和ルートを複数計画のうえ、「大子方面迂回路↑」の立て看板を設置しました。その情報を大子工務所のほか、大子町、町観光協会、グリンヴィラ大子、道の駅のホームページにもイベント毎に載せていただきました。観光客の方々にスムーズに来ていただき、安心して帰ることができる、そんな環境づくりを目指しました。「大子方面は渋滞する」というイメージを払拭したかったのです。
 また、小さな取り組みではありますが、高齢者が多いことと観光地として景観を整えるため、歩道の土砂の除去や除草なども心がけました。冬季には土砂が原因となってできた水たまりが凍結し、スリップ事故につながるため、細部にも気を配りました。
 大子町に通勤してみて分かったことですが、大子町には日本の良さがたくさん詰まっています。山、川、温泉、滝、それにおいしい米やお茶、アユ、リンゴ、こんにゃく、しゃも、常陸大黒などがあり、それに季節が深いです。春には一斉に木々が芽吹き花が咲く、盆地のため夏は暑い、秋は紅葉が目に沁み、冬は厳寒になり袋田の滝が凍り、久慈川にはシガが流れる。そこに人々の暮らしがあり、観光客が訪れる。そして、生活圏が福島県や栃木県とも共有されている町であるため、国県道の整備と維持管理は必須でした。災害等も予想されたため、地元建設業界とも訓練を重ねたことが昨日のことのようです。最近では、従来からの店に加え、古い街並みや建物を活かしたカフェやおしゃれなお店が増えてきたようです。袋田バイパスの開通により、大子町を満喫する人が増え、ゆとりをもって快適な時間を過ごせるようになればと期待しております。(島津就子)

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