いばらきの公共事業 県庁舎関連事業推進室編②
2023.09.22
いばらきの公共事業(歴史をたどる)
新県庁舎周辺整備について
渡邊 一夫 氏
元県土木部長(当時・県庁舎関連事業推進室長)
袖山 茂 氏
元技監兼常陸大宮土木事務所長(当時・県庁舎関連事業推進室係長)
新県庁舎の周辺にはホテルやマンションが建ち、ショッピングセンターやホームセンターも立地しています。戸建住宅も急ピッチで増え、4車線の両側には色々な業種の施設が日に日に増えています。県庁舎はさすがに、すごい求心力だなと思っております。
自然にやさしいインフラ整備追求
茨城県のシンボルとなる新県庁舎の周辺整備のため、利便性・安全性はもちろんのこと、自然にやさしく人にもやさしい、景観にも十分配慮したインフラ整備が求められていることを認識し、事業を進めたのです。
サントル千波から県庁南大通り線まで、また県庁南大通り線の一部は、電線共同溝を敷設する計画です。電線や電話線、可能なものはすべて共同溝に収めれば、すっきりとしたすばらしい景観が生まれます。
舗装は排水性舗装、雨の日のスリップよけです。交差部は渋滞対策のため極力右折長をとるよう心掛けました。県庁南大通り線から水戸神栖線への右折は念のため2車線確保しました。
水戸神栖線の工事は現道拡幅であり、通行止めもできないことから、切り回し切り回し行ったのです。補償物件が解体されたところから工事をこまめに発注し、対応するしかありませんでした。
別で発注した共同溝との調整、工区間の調整を毎日毎日、きめ細かな施工管理を行いながら進められました。
県庁南大通り線は、工事用にも使えるよう庁舎まわりを先行しましたが、それから東側については用地がまとまったところから、基本的には西側から順に進めていきました。途中、逆川の橋梁については先行して段取りを進めました。
区画整理の造成ですが、一人施工の区画整理だったので、手続きは急ピッチで進められました。最初は道路工事の残土置き場として使用していたので、途中から急ピッチで造成に取りかかりました。後に困らないよう、調整池も公園の一部を掘り下げることにより対応しておきました。
途中で県庁舎建設局から要請があり、バスターミナルをつくり、運転手さんの休憩所、トイレ(これは一般の方も使えるよう場所を工夫)もつくったのです。
最後に気をつかったのは、歩道と植栽です。利便性・景観・コストを考え、交差点部はインターロッキング、他はカラー舗装と黒舗装を使い分け、実施しました。
植栽ですが、庁舎まわりは桜(ソメイヨシノ)が選ばれました。広い歩道であり、シンボル的でもあり、水戸市の梅香下千波線(さくら通り)の桜も4車線化により無くなってしまうので、良い選択だと思いました。
通常、街路樹は8~10mピッチで植えていたのですが、ここではのびのび育ってもらうため20mピッチに植えました。ソメイヨシノの樹齢は約70年です。50~60年後、この間に若木を植えればうまく世代交代もできるのではと期待を込めたりもしたのです。
とにかく大変な仕事でしたが、庁舎完成の式典の3日前にはすべて完了し、供用開始できたのです。関係者でささやかにあげた祝杯、今でも忘れることはできません。
県庁周辺がすばらしい景観に
強い連帯感で見事完成
都市計画道路水戸駅平須線と県庁南大通り線、両道路とも「県庁の顔」となるシンボルロードとして、100年体系の道路整備を進めました。道路規格は4種1級、設計速度60㎞、車道部D交通、排水性舗装、歩道部透水性カラー舗装としました。
土地区画整理地内の区画道路については、新県庁舎を囲む区画道路1号線、2号線は機動性を考慮し、県道水戸神栖線重用としました。他の3~6号線は、水戸市道としております。
新県庁舎周辺道路については、電線類地中化計画により下水道(雨水・汚水)、上水道、電気、通信、ガスすべてが地下に埋設されています。
水戸駅平須線・県庁南大通り線の歩道下には、電線類をまとめて収容する電線共同溝(C・C・BOX)を整備しました。特に頭を痛めたのは、区画道路歩道下の地下埋設物です。汚水・上水道・電気・電話・ガスそれぞれにより整備が進められ、輻輳し、交差もあり、埋設深さもそれぞれ違うことから、ばらばらに施工していたのではかなりの日時を要してしまう。どうしたら手戻りなく、それぞれ効率的・スピーディーに施工が出来るか、時間の余裕がない中で悩んでおりました。
悩んだ末に、アイデアが浮かびました。施工の際の、土の埋め戻しを最小限にする事で深い位置から順番に施工する、一番目の人は埋設後、二番目の人の埋設高まで埋め戻す。これを順番に繰り返すことで、埋設業者さんと調整を図りました。毎週定例会議を開催し、埋設の工程管理を確認したことを覚えています。
水戸駅平須線は総事業費110億円、県庁南大通り線は総事業費49億円、土地区画整理地事業費は約40億円。4年間で、これだけの事業費を確保するのは大変でした。他の事務所で使えなくなった予算は、すべてこちらに回してもらいました。主管課の公園街路課、都市整備課も本気になって国と協議をするなど、事業費の確保に当たってくれたのです。
県庁舎関連事業推進室ができて3年目、平成9年に渡邊さんが室長になり、現場は急速に動き始めました。平成10年には技術担当職員も4人から6人体制に、用地担当職員も4人から6人体制になりました。そのおかげで、残っていた水戸駅平須線の大規模家屋14件のうち、未契約9件が次々と契約となりました。
県庁南大通り線も、代替地希望の地権者の意向に添った代替地斡旋が功を奏し、契約が続きました。平成9年10月頃には、両道路とも本格的な工事の着手に入り、1工区5000万円~2億5000万円ほどの規模で、数十工区に分け実施しました。特に水戸駅平須線の工事は、交通量の多い現道を通しながら何回も切り回しを行い、なおかつ連立する商業施設への出入りも確保する複雑な工事となりました。ぎりぎりな工期の中、完成までこぎつけてくれた施工業者さんには大変感謝しております。
県庁南大通り線は、当初計画の市道笠原東野線までの1050mから延長し、市道梅香下千波線までの1680mの整備を進めました。大変厳しい工期で、最後の240mは暫定2車線での開庁になりました。ここでも施工業者さんには大変感謝しております。
平成11年4月の開庁に際しては、新県庁舎への水戸・赤塚バス路線のスムーズな運行も併せて、アクセス道路の交通ネック箇所の解消を図りました。また、市道梅香下千波線と県庁南大通り線の交差部における右折車線100mの設置、県道長沢水戸線の国道6号線タッチ部の道路改良、サントル千波交差点の国道50号BP側道部の右折車線100m延長工事、市道赤塚南口線と県道水戸岩間線の交差点改良、県道玉里水戸線の50号BPタッチ部の道路改良など、他課にも協力してもらいながら整備を進めました。
縮尺の大きい地図を貼り付け、そこにネック箇所を落とし込み、皆で要整備箇所として認識を共有しました。室としての強い連帯感が生まれていたと思います。渡邊室長には、「仕事は目先のことばかりでなく、鳥の目で全体を俯瞰する目を持つことが重要だ」と教えていただきました。仕事の進め方を、身をもって感じることができたと思います。
4年間の期限内で完成にこぎつけられたのは、組織構成にも要因があります。用地担当と工事担当が、同じ室で担当の区別なく、一緒に連携して仕事に当りました。また、室員全員が室長のもと、同じ目標に向かって一枚岩となり、用地交渉、整備にあたったことが完成につながったと思います。
大変苦しい時もありましたが、この大規模事業に携わることで、自分自身も成長出来たこと、大変感謝しております。(島津就子)