いばらきの公共事業 県土木部道路建設課編①
2023.07.08
いばらきの公共事業(歴史をたどる)
国道294号常総バイパスの思い出
渡邊 一夫氏
元県土木部長(当時・県土木部道路建設課)
渡辺 功氏
元県土木部技監兼筑西土木事務所長(当時・常総工事事務所長)
私は32~33歳の頃、石下土木事務所(現・常総工事事務所)に勤務しておりました。道路改良、交差点改良、橋梁などの現場を担当し、日々頑張っていたことを懐かしく思い出します。この地域は名所旧跡が多く、暇を見つけては尋ね歩いたりもしておりました。
立体化より4車線化優先
国道294号は、千葉県柏市から茨城県南部、西部、栃木県を通って、福島県会津若松市に至る一般国道であります。
常総バイパスは、つくばみらい市から筑西市にかけて約40㎞のロングバイパスです。この計画を最初に見たとき、「何と大胆な計画だろう」とびっくりしたことを覚えています。常総の地に広がる美田の中を、どこまでも真っ直ぐにのびていくルートだったのです。この常総バイパスとは、長いお付き合いになりました。
この事業の大部分は、圃場整備事業と連携し、創設換地で道路用地を生み出していただき、その後、道路側が用地を買収をする、という仕組みでした。おかげで、スムーズに用地取得を完了させることができたのです。
工事にあたっては、ちょっと厄介な問題がありました。このバイパスには、軟弱地盤の箇所がたくさんあったのです。
道路建設課、石下土木事務所、下館土木事務所で綿密に打ち合わせをしながら、工事を進めました。本格的な軟弱地盤処理は行わず、盛れる高さまで土を盛り、下がったらまた土を盛る。落ち着いたところで路盤工を行い、防塵処理を施し、交通開放をする、というやり方です。
このようにして、平成7年、常総バイパスは暫定2車線(一部4車線)で全線開通となったのです。
この頃、国道294号は地域高規格道路に格上げとなりました。立体化を進める路線となったのです。しかし、立体化より4車線化を優先して進めるべきということになり、国道354号交差点から筑西市にかけ、暫定2車線となっていた27・5㎞について、一気に拡幅工事を進めることとしたのです。
これだけ長い区間の事業採択は例がないということで、国は難色を示しておりましたが、なんとかクリアできた時は本当に嬉しかったです。常総市、下妻市、筑西市にバランスよく工事の進捗が図れるよう、配慮しながら工事を進めていきました。
今では4車線化も完了し、県南部や県西部の大動脈となっております。どこまでも続くかのような、真っ直ぐなロングバイパスが大活躍しているのです。
渡辺 功(わたなべ いさお)
1959年2月27日生まれ。64歳。初入庁は82年で、都市施設課に所属。その後、下館土木事務所工務第一課改良係技師、常総工事事務所長、都市整備課長などを経て、2019年に技監兼筑西土木事務所長で定年を迎えた。
国道294号常総バイパスとの最初の出会いは、昭和59年4月、下館土木事務所でのことです。当時はJR水戸線と関東鉄道常総線を跨ぐ神明大橋の、片側2車線の上部工が完成間近でした。
まだ現場1年目だった私は、先輩が担当する現場を見て、その壮大さに感動しました。「いつかは自分も、こんな現場を監督したい」と、土木職員としての士気が大いに高まるのを感じていたのです。2年後に担当した主要地方道つくば益子線岩瀬跨線橋の上部工工事では、神明大橋の資料を参考に設計書の作成や現場管理を行い、何とか無事に完成させることができました。
その後、再び常総バイパスに関わったのは平成24年度~25年度、常総工事事務所の所長を務めていた時のことです。東日本大震災の爪跡が残る中、平成29年の首都圏中央連絡自動車道開通に合わせ、常総インターチェンジから国道125号までの4車線化を完了すべく、予算確保、工事発注に奔走しておりました。
3~5工区の分割工事で、交通量は1日2万台を超えるほどでした。そんな中でも、無事故で工事を終えられたのは、工事業者間の綿密な連携、徹底した現場の安全管理のおかげであり、関係者の皆様に改めて御礼申し上げます。
また4車線化に合わせ、常総インターチェンジのランプ橋と料金所までのB区間の整備も一体的に実施していました。国土交通省やNEXCO東日本の工事と同時進行になるため、工事範囲や進入路および開通目標に向けた工程など、協議調整には非常に苦労していました。
その後、平成27年9月に起きた関東・東北豪雨では、常総インターチェンジの一部用地を災害廃棄物の仮置場として活用しました。避けようのない災害に見舞われながら、それでも圏央道の開通に支障なく完成できたのは、関係者一同の努力の賜物と思っています。
平成29年度~30年度、筑西土木事務所の所長を務めた時には、常総バイパスの4車線化工事も最終盤を迎えていました。「道の駅しもつま」から筑西市の境までの間を、平成31年3月に供用し、全線の4車線化が完了しました。併せて、栃木県境付近にあたる筑西市樋口の、延長1㎞区間での4車線化も完了し、取手市西部から栃木県境までの約50㎞が、連続して4車線で供用されました。
私はこの他にも、県警察本部交通規制課に所属していた時は4車線化の交差点協議担当として、検査指導課首席検査監であった時は橋梁工事等の検査で、常総バイパスに携わっていました。
県土木職員として初めての現場から、筑西土木事務所で退職するまでの35年間に渡り、節目節目で常総バイパスと関わってきたのです。
現在、沿道には「アグリサイエンスバレー常総」、「道の駅常総」がオープンし、「しもつま鯨工業団地」内には海外企業が進出するなど、そのストック効果は十分に現われています。
今後も県南・県西地域の発展に一層貢献することが期待されている大規模事業に、県土木技術者として長期間携われたことは大変光栄であり、今でも感謝しております。(島津就子)