いばらきの公共事業 県水戸土木事務所編①
2023.01.20
いばらきの公共事業(歴史をたどる)
常磐道友部SAのスマートIC「社会実験」
渡邊一夫氏
元県土木部長(当時・県水戸土木事務所長)
羽部道紀氏
元県水戸土木事務所長(当時・旧友部町建設部長)
渡邊一夫(わたなべ・かずお)1948年1月7日生まれ。75才。71年、茨城県庁へ入庁。2002年、土木部港湾課長。04年、水戸土木事務所長。06年、土木部技監(総括)。07年、土木部長。08年、公営企業管理者企業局長。12年、茨城県開発公社理事長
「七草粥」とは、1月7日の人日(じんじつ)の節句の行事食。朝に「春の七草」が入ったおかゆを食べると無病息災、その年1年、元気に過ごせるとされています。私は昭和23年1月7日生まれ。今年で75才になりました。「七草粥」のおかげで、なんとか元気に過ごしております。今般、弊紙の小泉社長から土木部在籍中に記憶に残るさまざまな土木工事の経験談を話して欲しいとのお話をいただきました。道路や港湾、橋梁をはじめ工業団地の開発など手掛けてきた多くの公共事業を後世に残したいということでした。同僚や先輩、後輩の力をお借りしながら、まずは水戸土木事務所長時代の2年間を振り返りつつ、思い出深いエピソードを思いつくまま、お話していきたいと思います。
高速道路の追加インターは設置条件が厳しく、相当のお金がかかるということで、県内では日立中央ICのみで、県道路公社の制度を使って実験した一例があるだけでした。
そうした中、国がETCスマートICの社会実験を全国10カ所程度で実施することを発表しました。私を含め、県庁で高速道路の計画に携わっていた者は、「これは千載一遇のチャンスだ!」と思い、採択に向けて動き出しました。
様々な候補地の中から友部SAを選定したのは、旧友部町には笠間付近にICがありますが、友部JCTからは乗り入れできないことがネックになっていたからです。
採択されれば、建設にかかる地方負担は極めて少額で済み、管理もしやすく、県が進めている工業団地(当時の流通団地)の企業誘致にも弾みがつき、地域の利便性も高まります。
県としても、是が非でも採択にこぎつけ、社会実験を成功させて恒久ICとして残すという固い決意で臨み、強く働きかけることにしました。
そして、県と町とでタッグを組み、地元の熱心な要望活動も功を奏し、当初の10カ所からは漏れましたが、見事、追加で採択を受け、社会実験を開始することができました。
この頃、私は水戸土木事務所長に就任しており、具体的に対応する立場にいました。
途中、用地問題を含め、いろいろな課題がありました。県も積極的に負担していこうという方針のもと、地方負担については県と地元自治体が折半し、役割分担しながらアクセス道路をつくる、という新しいルールをつくりました。
ところが、いざ採択され、現場では着々と手続きが進んでいるものの、当時はETC自体がほとんど普及しておりません。当然、私の乗る水戸土木事務所長車にも搭載されていません。
私はすぐさま県の公用車全てにETCを搭載してくれるよう、本庁へ強く働きかけました。笑い話のようですが、こうしてとりあえず所長車だけ搭載することになりました。そして、やがて着々と他の公用車にも搭載されるようになりました。
友部町でも補助金を出したり、民間企業にお願いするなどして、ETCの普及とICの利用を働きかけました。
とにかく実験期間中に利用台数を増やせば恒久化できるということで、皆で頑張ったことを覚えています。
各土木事務所に対しても、県庁に来る際にはこのスマートICを必ず利用するようお願いしました。
今、茨城中央工業団地の笠間地区には、素晴らしい企業が続々と立地しています。アクセスのあまり良くなかったこの地域が、スマートICのおかげで非常に魅力的な地域へと変貌を遂げたのだと思います。
県と町、関係者の皆さんとともに頑張って「よかった、よかった」です。
羽部道紀(はぶ・みちのり)1950年11月30日生まれ。72才。75年、茨城県庁舎へ入庁。初所属は河川課。道路建設課長などを経て2011年に水戸土木事務所長で定年を迎える。
私は2002~04年度まで友部町に出向し、建設部長を務めていました。当時、SA、PAにETC専用の出入口をつくってスマートICの社会実験を行うという情報をキャッチし、友部SAでできないか検討しました。
採択条件の1つは、既存道路に容易に接続できること。
それなら、まず新たな町道を先行して整備しようと、町議会全員協議会の了解を得て道路の設計と用地交渉にとりかかりました。金融機関にはETCカードの窓口を確認したり、スマートICの利用が期待できる地元商工会や県教育研修センターなどへ、ETC車載器の取扱い店情報なども提供しながら協力を要請しました。
また、町内の自動車学校を訪問してETC装着を働きかけたところ、「岩間ICまで遠回りして高速講習を行っているが、目の前から乗れれば講習の効率が格段に良くなる」と理解を得ることができました。
採択までには「友部SAを囲んで4つのICがあるのに新たにスマートICをつくって誰が乗るのか?」など、厳しい意見をいただきましたが、それまでの地元説明会での感触から、関係機関による地区協議会では「目の前にスマートICができれば新たな高道路利用者は十分期待できる」と自信を持って説明することができました。
社会実験が始まると、早々に500台/日をクリア、恒久化して現在に至っています。
実際、県立中央病院へのアクセスも高まったことから、スマートIC整備は非常に意義のあることだったと思います。