いばらきの公共事業(歴史をたどる)

県開発公社理事長・土地開発公社理事長編⑥

2024.12.07

いばらきの公共事業(歴史をたどる)

茨城県土地開発公社について
~北関東自動車道、東関東自動車道の用地取得に貢献~

渡邊 一夫 氏
元県開発公社理事長

石川 博章 氏
元県常陸大宮土木事務所長(当時:参事兼公共用地室長)

 東関東自動車道の全線供用が間近となっています。長い年月がかかりましたが、茨城県の4本の高速道路網(常磐道、北関道、圏央道、東関道)が、いよいよ完成するのです。この連載も残り2回となりました。今回、そして次回はこの高速道路の用地取得に大きく関わった土地開発公社の話をしたいと思います。

 茨城県土地開発公社は「公有地の拡大の推進に関する法律(公拡法)」を設立根拠として、平成2年4月に設立されました。道路や河川、公園などの土地の取得、造成、管理や処分などが主な事業となっております。私はこの土地開発公社とは、設立時から長い付き合いがありました。
 設立当時、私は都市計画課におり、道路建設課と一緒に許可手続に必要な事業計画づくりなどに関わりました。平成4年4月から2年間、土地開発公社の用地建設部用地課長を務めました。
 いろいろな業務に携わりましたが、当時の特に思い出深い2点のことについてお話したいと思います。
 1点目は、北関東自動車道の水戸南インターから友部インターまで約21・7㎞区間の用地取得業務を、道路公団から土地開発公社が受託したことです。大急ぎで県、水戸市、茨城町、友部町から職員を派遣していただき、組織を拡充して対応しました。用地実務の勉強会を行い、公団が行う事業説明会、境界立会い、用地補償説明会には、道路建設課と一緒に必ず同席しました。
 地権者の皆様からは、色々な条件は出されましたが、用地買収は順調に進み、まとまったところから公団が工事に着手していったのです。この区間の早期供用のお役に立てて良かったと思いました。
 2点目は、県施行の常陸那珂土地区画整理事業で整備した保留地を、県の要請を受け土地開発公社が引き受けたことです。バブル崩壊の影響を受け、民間への保留地処分が難しくなったので、代わりに土地開発公社が引き受け、早期の事業収束を図ることになったのです。面積55・9ha、約197億円の大きな買い物でした。
 その後、この土地には「ジョイフル本田」さんや「コストコ」さんなどに立地いただいて、未処分地は現在7haのみとなっており、大変な賑わいを見せております。
 2年間という短い期間でしたが、県の大きなプロジェクトに関わることができました。大変でしたが、非常に有意義だったと思っております。
 時が経ち、平成24年7月、私は土地開発公社の理事長に就任しました(開発公社と兼務)。1年後、今度は東関東自動車道の用地取得に携わることになりました。
 潮来インターから鉾田インターまでの区間、約30・9㎞については、国の直轄事業です。この整備を促進するため、3年間で約80億円の用地取得業務を土地開発公社が受託することになったのです。さっそく、北関道同様、県および地元潮来市、行方市、鉾田市から職員を派遣していただき、「東関東自動車道用地室」を立ち上げました。
 はじめの頃は、期間内に買収が完了させられるか多少不安はありましたが、用地補償説明会、補償相談会、契約会を経て、個別交渉へと頑張ってもらった結果、平成27年11月末までに576人の方々と契約を結び、年度末まで4カ月を残して業務を完遂させることができました。このことにより、東関東自動車道の完成年次を大幅に前倒しすることができたと思います。
 改めまして、職員の皆さん、関係された方々に深く感謝申し上げます。節目節目で、関係者全員で情報交換会を行い、その後は必ず息抜きをしたのが、懐かしく思い出されます。

北関道 水戸南インターから友部インター間約21㎞  関係職員を派遣、組織拡充
東関道 潮来インターから鉾田インター間約31㎞  3年間で80億の業務受託

石川 博章(いしかわ ひろあき)
1961年5月4日生まれ、63歳。85年、県に入庁。都市施設課に配属となる。その後は常陸太田工事事務所長、都市計画課長、高萩工事事務所長などを務め、2022年に定年を迎えた。現在は大日本ダイヤコンサルタント㈱に勤めている。

地権者576人から100ha超を売買契約

 私は平成24年4月から2年間、参事兼公共用地室長として土地開発公社に出向していました。
 当時、東関東自動車道水戸線は茨城県内約51㎞のうち、千葉県境から潮来ICまでの約2㎞と、茨城空港北ICから茨城町JCTまでの約9㎞が開通し、鉾田ICから茨城空港北ICまでの約9㎞区間は、東日本高速道路㈱によって用地買収が進められていました。さらに、潮来ICから鉾田ICまでの約31㎞区間については、直轄施行区間として国(常総国道事務所)が用地測量を実施していました。
 この直轄施行区間約31㎞について、平成24年3月に国から県および地元潮来市、行方市、鉾田市に事業促進の協力依頼がありました。県と3市で協議し、県の土地開発公社を活用して県と市が一体となり、一括して受託するほうが効率的で、円滑に用地取得を進めることが可能であるとの結論に至り、3年間で総額80億円の用地取得事務を、土地開発公社が受託することになったのです。
 土地開発公社に着任してすぐ、国および県との調整を始めるとともに、次年度からの用地買収に向けた体制整備を進めました。組織を拡充し、新たに東関道の用地取得事務専属の組織として、東関東自動車道用地室をいこいの村涸沼に設置することにしました。現地までの距離が短縮されること、執務室・会議室・駐車場等の必要なスペースが確保できること、賃料等運営コストが縮減されることなどから、県開発公社理事長でもあった渡邊理事長の発想で、開発公社施設のいこいの村涸沼内の「スポーツプラザ」を改修し、活用することにしたのです。
 人事課への組織要求では、要求通り3名増員の内示をいただきました。地元3市からも職員派遣にこころよく協力いただき、公社職員4名、市職員3名の計7名に、登記嘱託員1名、臨時職員1名を配置し、平成25年4月に東関東自動車道用地室を開所しました。
 受託業務は、国が算定した補償算定書に基づき、土地開発公社が用地交渉、契約締結、登記申請、補償金の支払い、移転等の確認、税務証明書の作成等を行うもので、本社(県開発公社ビル7階)と東関東自動車道用地室で事務を分担しました。本社では国との協定等の締結や補償金支払い等の業務を実施し、東関東自動車道用地室では用地交渉、契約、登記、支払関係書類の作成等を行いました。
 東関東自動車道用地室は、用地事務研修会や勉強会、国の業務への協力、説明会開催の段取りなど、用地買収に向けた準備作業で開所当初から大忙しでした。
 用地交渉業務を円滑に進めるためには、公社職員が用地補償業務に関する幅広い知識を身に着ける必要があることから、交渉の進め方をはじめ、登記や税務等に関する様々な研修会や勉強会に参加し、知識の向上を図りました。また、用地交渉に先立ち、地権者の状況を十分に理解しておく必要があることから、用地境界立会から用地測量、土地調書作成、建物等補償金額の算定まで、国が実施する作業に土地開発公社も積極的に参加・協力しました。
 さらに、用地交渉における想定問答を収集し東関道水戸線独自の想定問答を作成したり、国から提供された地権者情報をあらかじめデータベース化しておくなどして、交渉の本格化に備えました。
 また、用地買収開始に向けて地元への入り方や今後のスケジュール等について、国、県、地元3市および土地開発公社が一堂に会して、事業の進め方に関する全体会議を実施しました。もちろん懇親会もセットです。このような全体会議は、その後も節目節目で開催され、東関道水戸線の用地取得業務に総力戦で臨むという関係者間の一体感が醸成されて、業務の円滑な遂行につながったのです。
 受託初年度は、区間全線の用地測量が完了していなかったため、境界立会が完了した区間から用地買収に入ることとなり、最初に全地権者を対象とした全体説明会を実施し、その後、地区単位で用地補償説明会、補償相談会、契約会を行い個別対応に進むこととしました。
 「補償説明会の開催単位は集落の関係性が重要であるから、地元の市と十分協議して進めること。開催日時は平日の夜と、平日に来られない方の対応として土日の昼間に開催すること。説明者はステージ等を使用せず、地権者と同じ目線になるよう留意すること」など理事長の助言により、きめ細かい気配りで国に協力しながら準備作業を進めました。
 半年間の準備期間を経て、平成25年10月に国主催の全体説明会を沿線の各市ごとに市長出席のもと開催し、用地買収に本格着手しました。その後、用地測量が完了した区間から順次、用地補償説明会、補償相談会を開催し、契約会と個別交渉により契約を締結していきました。
 私は、用地事務の受託体制を整え、東関東自動車道用地室を開所して一年で異動となりましたが、土地開発公社が受託した用地国債80億円は、計66回の説明会と個別交渉により、平成27年11月をもって全額執行が完了しました。576人の方々と100ヘクタールを超える土地売買契約を結び、受託期間3年に4カ月を残して業務を完遂させることができたのも、地権者の皆様のご協力はもちろん、東関東自動車道用地室の皆様の頑張りと国、ならびに県、そして地元3市の関係者の熱意と連携が強く働いた結果であると思います。
 現地では着実に整備が進んでおり、今後さらに整備が進むことで、県と鹿行地域の発展に一層貢献されることが期待されます。この大きな事業の一端を担わせていただいたこと、大変光栄であり感謝しております。(島津就子)

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