県開発公社理事長・土地開発公社理事長編⑤
2024.11.23
いばらきの公共事業(歴史をたどる)
開発公社が運営する「いこいの村涸沼」について
~お年寄りから子供さんまで楽しめる施設~
渡邊 一夫 氏
元県開発公社理事長
礒崎 隆氏
元県開発公社事務局参事(当時:いこいの村涸沼支配人
涸沼は湖水面積9・3平方㎞、周囲長22㎞、海水と淡水が混ざり合う、全国的にも希少な汽水湖です。マハゼやヤマトシジミなど、たくさんの魚貝類が生息しており、スズガモ、サシバなど百種類以上の野鳥が観察できます。ヒヌマイトトンボの生息地としても有名です。平成27年には、水鳥の生息地として国際的に重要な湿地と認められ、ラムサール条約に登録されました。この涸沼で、子供たちとハゼ釣りを楽しんだのが、懐かしく思い出されます。
「いこいの村涸沼」は昭和52年、当時の雇用促進事業団により、勤労者の保養のための施設として設立されたものです。開発公社は設立時から、この施設の管理運営を任されておりましたが、平成17年、県経由でこの事業を引き継ぐことになり、それ以来事業主体として施設のリニューアルに努め、利用者増を図っていたのです。
敷地面積は約15 ha、本館は鉄筋コンクリート造3階建て、客室38室、宴会場、会議室、レストラン、展望温泉風呂などを備えております。広い敷地を利用して、グランドゴルフやパターゴルフなどを楽しむことができます。夏場には、わんぱくプールが大人気となっております。
私が開発公社の理事長となった平成24年当時、この「いこいの村涸沼」は利用客数が思うように伸びず、四苦八苦している状態でした。どのようにしたら利用率を上げられるか、職員と議論を重ねました。はじめに、調理人の意見を参考にして、調理場へ最新型の炊飯器と、より大型の冷蔵庫などを導入しました。食器類も、思い切って魅力的な新しいものに全て交換しました。
レストランは、涸沼を眺めながら食事を楽しんでいただけるよう、大幅にグレードアップしました。この頃、本館の外壁、屋根、玄関アプローチ、フロントカウンター、客室にわたり、大規模なリニューアル工事も実施したのです。利用していただく皆様に、より優しく、より快適な施設を提供することをコンセプトに、みんなで知恵を出し、完成させたのです。
次は、涸沼が一望できる半露天風呂付きのオシャレな洋室5部屋を新設オープンさせました。これは当初から大人気で「いこいの村涸沼」のPRに大いに役立ってくれました。涸沼に関する資料を展示している「インフォメーションプラザ」や、屋内競技施設の「スポーツプラザ」も順次オープンさせました。
公共残土を活用して、グランドゴルフ場を増設し、親子で楽しめるパターゴルフ場もリニューアルしました。プールも大々的にリニューアルして「わんぱくプール」と命名し、周辺の子供さんたちに無料券を配ったりもしました。
地元の鉾田市と「災害時における支援に関する協定書」も締結しました。災害が発生した場合、「いこいの村涸沼」が避難場所の提供、浴場の開放、炊き出しの提供などの支援を行う内容となっています。
施設の魅力づくりを進めると同時に、旅行会社はじめ、いろいろな方々の力をお借りし、PR活動を積極的に進めた結果、少しずつ利用率も上がり、ついに黒字体質になることができました。職員の皆さんと頑張り抜いた結果だと、本当に嬉しく思っております。
これで開発公社のお話は締めとなりますが、こうして開発公社は県の支援と職員の頑張りで、多額の借入金が無くなり、プロパー団地の分譲用地も完売となり、管理している全ての施設が黒字体質となったのです。職員の皆さんの給与カットも復元することができました。
県出資団体等調査特別委員会で「開発公社の事業を存続させる」という提案がなされた時、多くの職員が「いこいの村涸沼」に集まり、「これで将来的に希望が見いだせた」と喜びながら美酒を交わしました。私にとって、とても嬉しく貴重な思い出です。
礒崎 隆(いそざき たかし)
1961年12月22日生まれ、62歳。86年に茨城県開発公社に入社。その後はいこいの村涸沼支配人、事務局参事などを務め、2022年に定年を迎えた。その後、同年に再雇用でいこいの村涸沼に勤務し現在に至る。
いこいの村涸沼は、昭和52年の開設から、宿泊や日帰利用によって、県内外から沢山のお客様にお越しいただいておりました。しかし、時代の流れによるお客様の利用形態の変化や施設の老朽化の影響などによって、年々、利用者の減少が見られ、施設経営も厳しくなっておりました。
このような厳しい状況を打開すべく、「施設運営改善」と「施設改修」を軸として、経営状況の改善に向け、幾度となく議論がなされておりました。
私は平成26年4月の人事異動によって、本社からいこいの村涸沼へ配属され、平成27年度の施設リニューアルオープンに向けて、これらの業務に携わることになりました。将来の施設のあり方を大きく左右する大切な業務なので、大変な重圧がありました。しかし、当時の渡邊理事長を先頭に、本社の方と施設職員とで細部まで議論を重ね、お客様に「また行きたい」と思っていただける、魅力ある施設を目指して業務に取り組みました。
まず、「施設運営改善」については、新規顧客の増加を目指すため、民間の旅行予約サイトと契約し、より広く、より多くの方々に施設の存在を周知する予約環境を整えました。
また、食事の提供方式については、お膳方式からハーフバイキング方式に変更し、お客様自身にお好みの料理を選んで楽しんでいただける方式としました。そして、料理内容も、幅広い年齢層に喜んでいただけるよう、地元食材を用いて、手作りで種類豊富な料理にこだわることにしました。
いこいの村涸沼にとって、これらの改革は非常に思い切ったものでしたが、ご利用されたお客様からは、大変ご好評をいただくことができました。
次に「施設改修」については、お客様からのご予約の際に、洋室の利用を希望される声が大変多くなっており、そのようなお客様のニーズにお応えすべく、和室の一部を洋室に改修するとともに、新館として洋室の増築を行うことになりました。また、玄関、フロント、レストランなどの一部改修も行いました。
屋外施設については、高齢者の間で人気の高いグラウンド・ゴルフ場の増設と、ターゲット・バードゴルフ場のコースを新設しました。また、テント型体育館「スポーツプラザ」の開設により、同じく高齢者を中心に競技人口が増加しているスポーツウエルネス吹矢の利用環境を整備し、屋内での交流の場として運営を開始しました。これらの整備を行うことで、各スポーツ協会様のご協力のもと、日帰りや宿泊での競技大会が開催されることになりました。さらに、スポーツプラザでは、バトミントン、卓球、ソフトバレーなどお子様や若い年代の方々に人気の競技も楽しめるようになりました。
新たな屋外施設の整備によって、お子様から高齢者まで、年代に合わせて、いつでもスポーツを楽しめる「生涯スポーツの拠点」の基礎を整えることができました。
同じ時期、涸沼を取り巻く環境としても、平成27年5月に涸沼がラムサール条約の登録地となるという大きな変化がありました。そこで、涸沼の豊かな自然環境の案内所として「インフォメーションプラザ」を開設し、涸沼の自然環境等の資料展示と、野鳥観察会、昆虫観察会、ハゼ釣り大会などを定期的に開催することになりました。
これらの「施設運営改善」と「施設改修」により、いこいの村涸沼の環境は大きく変化しました。お客様に目的を持って利用していただける施設として、平成27年度にリニューアルオープンを迎え、新規顧客の増加にも繋がることとなりました。
このように思い切った改革が出来たのも、当時の渡邊理事長だから可能であったと思います。私も当時を振り返りますと、一緒にいこいの村涸沼全従業員で新たな改革を行ったこと、大変ではございましたが、楽しく有意義な時間を過ごさせていただきました。これらの改革があったからこそ、今も賑わいがあるものと思っております。ここ数年、コロナ過の影響で経営も厳しい状況でしたが、現役の皆様が更なる改革を行っているところでございます。(島津就子)