茨城の歴史点描

茨城の歴史点描㊺ 特別展「鹿島と香取」

2023.03.16

茨城の歴史点描

茨城県立歴史館史料学芸部 特任研究員 永井 博

 現在、歴史館では特別展「鹿島と香取」を開催しています。
 歴史館では、これまで鹿島神宮に関する展示としては、二〇〇四年度に特別展「鹿島信仰―常陸から発信された文化―」を開催しました。この特別展は、鹿島神宮に対する「信仰」に焦点を絞り、県内はもとより東北までの「鹿島信仰」の広がりを紹介したものでした。
 今回は、鹿島神宮に加えて、利根川をはさんで対をなす香取神宮に関する資料を中心としながらも、その周辺地域も含めた鹿島、香取地域を紹介します。
 展示はⅠ期(二月十七日から三月二十一日まで)とⅡ期(四月八日から五月七日まで)の二期にわかれ、総数一五六点の資料を紹介します。そのうち国宝は二点(うち一点は複製)、重要文化財が七点、県指定文化財は二五点、市町村指定文化財が三点となります。
 見どころとしては、まず国宝に指定された二点があげられます。
 一点目は、鹿島神宮に伝わる「直刀」とそれを納める「黒漆平文太刀拵」です。この刀は鹿島神宮では「韴霊剣(フツノミタマノツルギ)」と称しており、祭神タケミカヅチが刀から生まれ出たという神話に基づくもので、奈良から平安時代初期の製作といわれています。全長二二三センチという巨大な刀でその圧倒的な存在感と当時の技術の高さを感じることができます。
 二点目は、香取神宮に伝わる「海獣葡萄鏡」です。唐で製作された直径二九・三センチの銅鏡で、今回は精巧な複製品の出品ですが、精緻な文様を鋳造した技術は驚くべきものです。
 また、鹿島、香取両神宮とも「武神」として武家の信仰も厚いものがありましたが、この点では源頼朝がそれぞれに発給した文書(県指定)も一見の価値があります。
 ほかには、幕末の安政大地震(藤田東湖が犠牲になった地震です)にちなんで刷られた「鯰絵」といわれる錦絵のなかで、「鹿島大明神・要石」がモチーフとして描かれている資料がⅠ・Ⅱ期あわせて三五点展示されます。
 これは「地震は大鯰が暴れて引き起こすもので、ふだんは鹿島大明神が要石によって鯰を押さえ込んでいる」という俗信が幕末に広く流布していたことを示しています。見どころは、その漫画的ともいえる表現と解釈で、当時の人々が、大災害をどう見ていたのか、どのように乗り越えようとしていたのかが感じられます。
 ぜひご覧いただきたいと思います。

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