茨城の歴史点描

茨城の歴史点描㉜ 明治の鉄道敷設ブーム

2022.07.20

茨城の歴史点描

茨城県立歴史館史料学芸部 特任研究員 永井 博

 つくばエクスプレス(TX)の県内延伸について、県では今年度調査費を計上し本格的に取り組むことになりました。それに合わせて各地の誘致運動も盛んになってきています。
 TXは、当初取手以南の常磐線混雑緩和を目的に計画されました。全線が高架と地下で踏切がなく、全駅にホームドアが設置されており、事故等での不通、遅延はほとんどありません。特急は設定されていませんが、常磐線特急と同じ最高時速130キロでの運転により、「快速」は秋葉原、つくば駅間を45分で結びます。私は土浦に住んでいますが、目的地への定時到着が必要な時はあえてTXを利用しています。
 さて、県内に初めて鉄道が通ったのは、日本鉄道会社が東北線を敷設、明治十八年(一八八五)に古河駅を開設した時です。明治二十二年(一八八九)には、小山駅から分岐して水戸に至る水戸鉄道が開通し、水戸と東京が初めて鉄路で結ばれました。
 その後、明治二十年代後半には、日清戦争の戦勝による好景気もあり全国的に鉄道敷設ブームが起こります。県内も例外ではなく、県内外から県庁に開業免許申請が出されています。
 歴史館が所蔵する行政文書「各鉄道敷設願関係書類」(自明治二十九年至三十三年)には、つぎの一〇路線についての出願書類が綴られています。主要経由地とともにあげてみましょう。

①常海鉄道 磯浜(大洗)―鉾田―山田―麻生―牛堀―佐原―八日市場

②常岩鉄道 高浜(石岡)―堅倉―長岡―瓜連―大宮―大子―棚倉―郡山

③常岩鉄道 太田(常陸太田)―棚倉―郡山

④古河成田鉄道 古河―水海道―竜ケ崎―成田

⑤宮浦鉄道 大宮(埼玉)―岩槻―春日部―野田―水海道―谷田部―土浦

⑥小山鉄道 越中島(東京)―流山―諸川―小山

⑦利根鉄道 熊谷―栗橋―八俣―弓馬田―水海道―小張―板橋―竜ケ崎―金江津(河内)

⑧茨葉鉄道 小川―水戸、香澄―佐原

⑨土浦鉄道 久喜―境―石下―上郷―土浦

⑩川口鉄道 川口―越谷―野田―菅生―水海道

 この時期の鉄道は貨物輸送が主目的で、右の計画のなかに水海道や高浜などの水運の要所がみられるのはそのためです。水戸鉄道も水戸駅から水戸城の空堀を通り那珂川べりに貨物駅を設置しています。
 これらの路線のうち、②のルートは一部がのちの水郡線に重なりますが、ほかは免許が下りたものの、さまざまな問題から建設には至らず「幻の鉄道」となりました。

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