世界を漂う五七五七七
2024.09.10
コラム「四季の風」
◆ここ最近、部屋に入る夜風が涼しくなってきた。読書の秋のはじまりだ、と意気込んではみるものの、夏の疲れが抜けず、体がなんとなく怠い時もある。そういう時、開くのは短歌の歌集だ。いくつも並ぶ歌の中に、お気に入りを探す時間が楽しい。
◆ここしばらく、若者の間での短歌ブームが続いている。日々感じたことを五七五七七のリズムに託し、SNSに投稿する人も多い。『#短歌』で検索すると、驚くほどたくさんの短歌が溢れている。心地よいリズムの中に、日常のささやかな喜び、あるいは怒り、叫び、悲しみが込められるのが魅力なのだろうか。たったの31音が、見る人の心にそっと寄り添う。
◆俵万智さんの『サラダ記念日』は、誰もが一度は聞いたことがあるだろう。ベストセラーとして、現代短歌の先駆けとなった。そして今、SNSで短歌を投稿する歌人が多く生まれている。誰もが31音に思いを乗せ、発信、共有できる時代となったのだ。
◆荒れる世界情勢、世界中を蹂躙する災害、そして日常の中の小さな気づき、違和感。日々、何も思わず生きる人はいない。そうして歌は生まれ続ける。(S)