コラム「四季の風」

冬、いちばん身近な科学

2023.12.05

コラム「四季の風」

◆今年は北海道や東北など、すでに各地で初雪が観測されている。県内でも、もうじき雪が降るかもしれない。車であちこち回る身としては素直に喜べないが、やはり雪の美しさには心惹かれるものがある。

◆「路上の積雪を、私たちはただ踏んで通り過ぎるだけのようだが、感謝の気持ちを持たずにいられない」。1832年、古河藩主・土井利位が刊行した雪の結晶図鑑『雪華図説』に綴られた一文だ。結晶の図が載っている他、雪のおかげで食べ物の腐敗を防げることや、溶ければ川に注ぎ水源となることなど、雪の効用について説明している。

◆また、雪の生成の科学的な仕組みについても記している。この図説の刊行から100年ほど後、世界で初めて人工雪を生成した中谷宇吉郎博士も、この図鑑を読み、立派な研究であると賞賛している。

◆雪について、知れば知るほどのめり込んでいったのだろうか。利位は刀の鞘や柄、馬具、お菓子の型にまで雪の結晶のデザインを活用した。雪に対するその思いは計り知れないものがある。今年は私も利位に倣って、ただ踏んで歩くだけでなく、結晶の観察でもしてみようか。(S)

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