コラム「四季の風」

水戸刀その美しさ

2021.04.07

コラム「四季の風」

◆茨城県立歴史館で開催されている特別展『鋼と色金』に足を運んだ。凪いだ水面のような直刃や、桜の花びらのような丁子乱。鋭く光る鋼たちは、自らの辿った歴史を教えてくれるだけでなく、美しい景色も楽しませてくれた。

◆茨城でも多くの刀鍛冶が活躍していたことを、今回初めて知った。ちょうど大河ドラマにも登場している徳川斉昭は、尊王攘夷の思想を掲げたことで有名だが、自ら刀を打つ意外な一面もあったそうだ。実戦のための刀の研究に積極的だったことからも、斉昭の国難に立ち向かおうという気概が感じられる。

◆水戸藩内で打たれた刀は水戸刀と総称されるが、その多くは身幅が広く切先が大きいという特徴がある。剛健な姿であるが、刃文の表情一つ違うだけで、1振りごとにまるで異なる印象を受けた。ゆるやかに波打つ刃文などは、さながら静かな海のようにも見えた。

◆刀は雄弁である。刻まれた銘や姿から自らの辿った歴史を静かに語り、刃文で様々な景色を見せてくれる。刀は常に人と共にあり続け、今も人の心を魅了してやまない。それは「折れず曲がらずよく切れる」ことに加え、美しさも兼ね備えているからなのだろう。(S)

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