記憶に残る幻の軌道
2023.08.08
コラム「四季の風」
◆「幻の」とつくものを聞くと心が躍る。わずかな記録しか残っておらず、人の記憶の中で生き続けてきたものにロマンを感じる。そんな「幻の小さな鉄道」と呼ばれた軌道が東海村にあったことを、先日歴史と未来の博物館の企画展で知った
◆「村松軌道」はかつて東海駅から阿漕ヶ浦までをつないでいた鉄道で、村松虚空蔵堂への参詣者を運ぶ目的で開設された。しかし1926年~33年までという短期間しか村内を走らなかった。残っている資料や痕跡が少なく、写真も残っていないというまさに「幻の鉄道」だ
◆記憶の中に残る姿から村松軌道に迫る展示があり、証言から復元も試みられていた。また館内には、段ボールで制作された等身大の列車が展示されている。私の想像していた姿よりもずっと小さかったが、記録がほとんど残っていない列車が現代によみがえったと考えるととても興味深かった
◆村松軌道の線路跡を巡りながら歩けるマップも配布されている。時間を見つけて、幻の軌道が走る姿を思い浮かべながら、マップを片手に廃線跡を巡ってみようと思う。(K)