コラム「四季の風」

植物学の大きな一歩

2023.06.06

コラム「四季の風」

◆子供の頃、犬の散歩をしながら花を摘んだ思い出がある。タンポポ、シロツメクサなど、緑の中で息づく花々が美しかった。草花は、人の生活にそっと寄り添うような存在だ。彼らの名を、私たちが当たり前に知っている今という時代を築いた、偉大な先人がいる。

◆現在放送中の朝ドラ『らんまん』は、「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎氏をモデルにした主人公の物語だ。牧野氏は江戸末期に生まれ、世界に遅れをとっていた日本の植物学を大きく前進させる。「雑草という草はない」という言葉を残し、植物図鑑や図説を数多く刊行した。

◆その人生は、決して華々しいものではなかった。研究費のため、かなりの借金をしたという。ドラマでも、学生ではない身で大学の研究室に出入りすることに対する周囲の妬みや衝突の様子が描かれた。

◆それでも、牧野氏は植物学を諦めなかった。植物への愛という明るいエネルギーが、彼の背中を押し続けたのだろうか。ドラマを通して、笑顔で植物と向き合う姿を見ていると、そんな考えが自然と浮かぶ。何かに熱中する人の姿に力をもらう、いい朝だ。(S)

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