彼女は尼将軍と成る
2022.12.13
コラム「四季の風」
◆大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の放送が、残すところあと1回となった。ついに尼将軍となった北条政子が御家人を鼓舞する姿は、見ているこちらまで背筋が伸びるようで、凛として美しい。政子の人生は波乱に満ち、血と涙にまみれていた。それでも、その生き様も立ち姿も「美しい」という形容が、ぴたりと当てはまるのは何故だろう。
◆源頼朝亡き後、鎌倉を去ろうとした弟・義時を引き留めたのは政子だった。鎌倉を共に支えるように、と。時を経て義時は、源実朝を失った後、鎌倉から逃げようとした政子を引き留めた。「姉上はこれまで何を成された」と、弟の行いを責めるばかりだった姉を責めるように。
◆綺麗ごとを言うばかりだった頃の政子は清く正しく、けれど何事かを成すことは出来なかった。そんな彼女が政治の世界に身を投じたのは、妹のため、民のため。人を思い、立ち上がった人間の佇まいは、きっといつの世も美しい。
◆政子に限らず、ドラマの登場人物は誰もが生き生きとしていた。その物語の主人公たる義時は、どんな最期を迎えるのか。最終回も目が離せない。(S)