コラム「四季の風」

ニューヨークの花吹雪

2022.04.12

コラム「四季の風」

◆日本生まれの桜が海を渡り、ニューヨークの土地に根付いたのは100年以上前のこと。意外にもNYには桜の名所が多く、多数の花見スポットがある。この背景には、日本の桜に魅せられたある女性の存在があった。

◆1884年、紀行作家で写真家の女性、エリザ・シドモア氏は、日本で目にした桜に心を奪われ、アメリカにも植樹したいと願うようになった。彼女はその後24年間、殺風景だったポトマック川沿いに桜を、と政府に働きかけ続ける。

◆彼女の要望を受けた、時の大統領夫人が桜の植樹に前向きであることをきっかけに、この活動は急速に前進。1909年、いよいよ日本の桜が海を渡るも、病害虫が原因で焼却処分となる。その3年後、国を越えた多くの人の協力もあり、ようやく植樹が叶った。この木は今でも、NYの地に根付いている。

◆摩天楼がひしめく大都市に花吹雪が舞う。海を越えた遠い地でも、花を愛でる誰かがいて、花を美しいと思う。国が違えど、人は同じ思いを共有できる。国境を越えた友愛が何処にでも生まれ得ることを、歴史が証明しているように思う。(S)

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