コラム「四季の風」

『正しい』は難しい

2022.03.15

コラム「四季の風」

◆嘘をついても約束は守るのが義理、約束は守らなくとも嘘をつかないのが人情。好きな作家の言葉だ。義理とは人が守るべき正しい道、人情とは人の情けである。嘘をつき約束も守らない人とは、人の道を違え、人の情を抱かぬ者であると言えるが、人が清廉であり続けるのは難儀なことだ。

◆大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、ついに源義経がメインキャラとして登場した。義経一行は頼朝の元へ向かう道中、とある狩人と兎の取り合いになり、義経は「矢を遠くへ飛ばしたほうが勝ちだ」と勝負を挑む。が、義経は騙し討ちで相手を射殺してしまう。

◆この機転あってこその彼なのだろうが、その行為は残虐とも言える。目的のため、嘘をつき約束も守らない義経には義理人情という概念など無いように見えるが、「兄のために」と純粋な思いを抱く彼に人の情が皆無かというと、それも違う気がする。一概には言えない『正しさ』の難しさを感じた。

◆現代を生きる我々にとっても、嘘を一つもつかず、約束を一つも違えないことは難しいものだ。それでも「正しく生きよう」と思う心こそが、人生には必要なのかもしれない。(S)

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