サイエンスする殿様
2022.02.15
コラム「四季の風」
◆雪の多い冬となった。車の運転をするようになってから、雪はどうしても疎ましい存在になってしまったが、じっくり見てみると雪の結晶はやはり美しく、様々な形があることに気づく。
◆江戸時代の古河藩主・土井利位は、政務の傍ら雪の結晶を観察・研究したことから「雪の殿様」と呼ばれている。彼は20年以上に渡り研究を続け『雪華図説』という図鑑を作った。これをきっかけに雪の結晶の文様は大流行し、着物などの図柄として取り入れられた。
◆さらに利位は、図鑑の第2巻『続雪華図説』まで出版したのだから、筋金入りの雪好きである。利位は雪の降る中、結晶を崩さぬようにピンセットで取り、顕微鏡で観察していたそうだ。かじかんだ手での作業は容易ではなかっただろう。
◆現代では、なんと百円均一ショップで買えるマクロレンズがあれば、スマホでも手軽に雪の結晶を撮影できるそうだ。利位が現代に生きていたら、雪の日はスマホ片手に延々と結晶の観察をしていたかもしれない。その楽しげな背中を想像すると、憂鬱な雪の日も少しだけ心躍るものに思える気がする。(S)