可愛いことだけは確か
2023.04.11
コラム「四季の風」
◆大阪歴史博物館に展示された物が、SNSで「可愛い」と話題になった。犬をかたどった土製品である。豊臣期の遺跡で見つかったが、使い方はよく分かっていない。犬が多産なことにあやかって安産のお守りにしたとの説もあるが、定かではないとのこと。ぺたんと垂れた耳や、つぶらな瞳が可愛いことだけは確かだ。
◆和歌山県九度山町には、戦国武将・真田昌幸の作と伝わる木彫りの犬がある。詳細は不明だが、戦から離れた知将の手慰みに作られたのだとしたら、ちょっと微笑ましい。モデルとなった犬はいたのだろうか。気になるところだ。
◆また福岡市美術館には、福岡藩2代藩主・黒田忠之が小犬と見つめ合う姿を描いた肖像画がある。作者は狩野派の絵師である狩野探幽。柔らかな眼差しの忠之と、穏やかに忠之を見上げる犬の姿が繊細に描かれている。制作背景などは分かっていないが、忠之と犬の親密度が伺える作品だ。
◆犬と人が共に生きたことを示す物は多くあるが、詳細が分からないものも多い。しかし、いずれも人から犬への愛を感じることだけは、確かなような気がする。(S)